2020.01.27 03:40ムラサキの谷 浮遊しているわたしという存在に前も後ろもないのなら上も下もないわけで、ではひたすら歩みを進めているこの足は一体何処へと向かっているのだろう。 踏み込んだ右足は沈んでいき、やがて角度がついて身体ごと一回転した。くるり。あたりを覆っている白い靄が全身を使ってかき混ぜられる。無重力状...
2015.08.27 19:31ただ夜に降る雨のように 夢に堕ちる瞬間はいつも孤独だ。現実世界から物凄い遠心力で放り出される。 一人きりの夜はまだ良い。どうせ初めから孤立した世界に居るのだから、眠りにつくのにそれほど不安は生じない。問題はあなたが隣に居る夜で、既に寝息を立てている場合などたまったものではない。 折角手に入れた安堵を自...
2015.08.15 19:29内緒で殺してしまおう。 目を覚ますと煌々と明かりがついたまま、ソファに横になっていた。身体を起こすと、毛布がはらりと床に落ちた。暫くの沈黙の後、私はそれを手に取りきゅっと強く握り締めた。 部屋で雑魚寝をしているのは、郊外に一軒家を建てた私達夫婦の元へ新居祝いに来てくれた、旦那の高校時代からの親友達。昔...
2015.08.15 19:27モノノナマエ 彼女はゲームセンターで僕が取ったぬいぐるみ全てに名前を付けていた。ピンクのくまには「ローズ」、耳の垂れたうさぎには「キャロット」。 なんだ、可愛らしいじゃ無いか。誰に話をしてもそういった回答に辿り着く。そう、ぬいぐるみだけの話ならまだ良いのだ。 この前買った全自動洗濯機は即決で...